~デジタルクリエイティブ放談 その1~

「変わり始めているクリエイティブ。デジタルはそのためのクリティカルピース」

博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ(以下、MP)グループを代表するトップクリエイター、
博報堂ケトル 木村健太郎、SIX 野添剛士、博報堂のデジタル思想を象徴する組織“エンゲージビジネスユニット”(以下:EBU)の二見 均。
クリエイティブ潮流の最先端で走り続けてきた3人が、博報堂/MPグループのデジタルワークについて語り合う。
第1回は、クリエイティブとデジタル、そしてデジタルキャリアについて放談。

デジタルの認識

デジタルはもう、言葉、ビジュアルに並ぶ
コミュニケーションの本質要素

野添皆デジタルに注目しますよね。でも本当に変わり始めているのは、クリエイティブ。僕はそう思っているんです。課題をソリューションするための単なる表現だったクリエイティブが、今や、ブランドや世の中を大胆にアップデートするものとして期待されている。デジタルはそのためのクリティカルピースに過ぎないと思うんですよ。

木村僕もそう思う。デジタルはもうメディアの一種というより、上流のプラニングにもクリエイティブにも必須の要素。なぜならコミュニケーションが、90年代までのようなメッセージを伝えるだけのものから、人を動かすためのものへと変わってきているから。人を動かすには、体験させたり自発的に何かをさせたり、インタラクティブな要素が欠かせない。言葉やビジュアルに並ぶ、コミュニケーションの本質要素になってきていると思う。

野添それは、デジタルが、グローバルとインタラクティブとリアルタイムの3つの可能性を持つからでもあると思う。デジタルで作ったものはネットでつながるから世界で見られるし、人と双方向に作用することが可能になる。しかもリアルタイムで。そういう可能性を秘めているから、何か物事をアップデートしようというとき、もう無視できない。木村さんが言ったようにどんどんコミュニケーションの本質に寄ってきている。だからデジタルは必要不可欠になったんです。

デジタルと組織

あらゆる領域に浸透したデジタルが、
さまざまな化学反応を引き起こしている

木村カンヌなどの広告祭でも、かつてはサイバー部門というのがあったけれども、今はありとあらゆるカテゴリーで必ずデジタルを使うようになったため、何を評価したらいいのかわからなくなってしまった。そのくらいデジタルは、どの領域にも入りこんでいる。博報堂でも同じで、すでにあらゆる領域でデジタル出身の人が活躍しています。広告業界ではデジタル出身のクリエイティブディレクターなんて、ちょっと前まではありえなかったんです。でもうちは、野添君のSIX(シックス)を始め、当たり前のように存在している。そして博報堂本体にも、二見さんのEBU(エンゲージメントビジネスユニット)のような、クリエイティブ、マーケティング、インタラクティブ、そしてデジタル系グループ会社からの出向者が皆、一緒になってソリューションを考えている組織がある。うちはもともと部署間、領域間の風通しが良くスキルが横につながりやすい会社だから、デジタルが浸透するのが速かった。

二見デジタルが浸透してくると仕事のスタイルも変わってきますよね。今までのクリエイティブディレクターは、1人で全部をディレクションしていくヒエラルキー型だった。けれども今のようにデジタルがインフラ化してくると、コミュニケーションの幅が広くなりすぎてとても1人ではできない。発想を変えてチーム全体でコミュニケーションデザインしていくことが必要になってきた。
そうなると求められるのが、それぞれの「際越え」。いくらチーム全体で取り組み始めても、自分の専門領域に縛られて分担型の業務をしている限り、結局領域ごとの隙間は埋まらない。「もうちょっとデータ解析の方向を見てみよう」とか「クリエイティブの方向に行ってみよう」とか、自分から際を拡張すべきだし、どうしても自分で埋められない領域は、他の人へと手を伸ばして重ね合わせ、チーム化していくことで埋めるということも必要になってきます。僕はこれを「のりしろ」と呼んでいるのですが、ケトルなどもそういう意味で非常にコンパクトなチームをつくった。ストラテジックプラニング職出身、クリエイティブ職出身、プロモーション職出身、営業職出身といろんな職能の人が集まってお互いがお互いの得意領域で化学反応している。ある意味確信犯的に際を越えようとしてきた人の集まりですよね。

木村僕らは「越境」という言い方をしています。

二見そうですよね。EBUももともと次世代的エージェンシーの実験として生まれた組織で、同じく、ストラテジックプラニング職出身、プロモーション職出身、クリエイティブ職出身、営業職出身などいろいろな出自の人が、同じ組織に統合されて化学反応を起こしている。その中で起きた特に純度の高い化学反応が、独立してSIXをつくった。デジタルクリエイティブとマスクリエイティブの融合で今またどんどん新しいものを生み出しているSIXだけど、全方位ではないから埋め切れないピースも出てくるはず。それは僕らEBUやデジタル系グループ会社と手をつなぎチーム化して埋めていくこともあるかもしれない。そんなチャンスがあるのがうちのデジタル系グループ会社のいいところだと思う。

博報堂におけるデジタルキャリア

専門スキルを横展開しながらビッグピクチャー
を描くデジタルキャリアもある

木村ケトルでは、全員がクリエイティブプラナーとかクリエイティブディレクター。誰1人スペシャリストの名刺を持っていない。なぜなら、全員がPRもデジタルもCMもマーケも全部やるから。それを聞いて「私は1つの部署で下積みをするよりも最初から全領域をインテグレートで学んでいくケトルのようなキャリアを歩みたい」と希望する新人がいるのですが、僕らはそういうのは絶対断っている。何か1つでも人に負けない領域をもっていないと、横展開はうまくいかないからです。だからデジタル領域でも専門スキルを身に着けることはとても大事なのですが、その後は2つの道があると思う。1つはそのまま専門家として日本一のインタラクティブプラナー、あるいはプログラマーを目指していく道。もう1つが、磨いたスキルを横に展開することによって、新たなフェーズの仕事や新しい社会をデザインする道。こっちの方がこれからのデジタル人材のキャリアではないかと僕は思っている。

野添SIXの場合は、デジタルクリエイティブの純度を思い切り高めて、世の中に大胆なアップデートを起こしていくことを専門領域にしています。というか、そうじゃない仕事はお断りしている会社。たぶん、僕らにしてもケトルにしてもEBUにしても、そういったビッグピクチャーを描きながら世の中にどういう効果をもたらしていくかというスタンスで仕事に取り組んでいる。

木村要するに、仕事というのは2領域あるんですよ。1つはビッグピクチャー領域。ビジョンがあって、プラニングがあって、クリエイティブがある。もう1つはその続きにあるプロデュース領域。どんな仕事にもその両方がある。施策やエグゼキューションを作っていく専門家は絶対必要なんだけど、広告会社は考えるだけでなくつくってアクションをおこすところまで責任を負う会社だから、どちらかだけというわけにはいかないんです。インタラクティブというスキルを使ったプラニングができるとともに、インタラクティブというスキルを使ったプロデュースもできないとならない。そこがうちの会社におけるインタラクティブ人材の活躍の仕方になっている気がします。(その2につづく

  • 木村健太郎
    (株)博報堂ケトル 共同CEO/エグゼクティブクリエイティブディレクター
    1992年博報堂入社。戦略からクリエイティブ、デジタルやPRまで職種領域を越境したプラニングスタイルを確立し、2006年博報堂ケトルを設立。10個のカンヌライオン、ふたつのアジア太平洋広告祭グランプリ、D&ADイエローペンシル、NYフェスティバルAMEグランプリをはじめ100を超える国内外の広告賞を受賞。カンヌやアドフェスト(審査員長)など10数回の国際広告賞の審査員経験を持つ。海外での講演も多く、2013年はカンヌフェスティバルで講演した。
  • 野添剛士
    (株)SIX CEO/クリエイティブディレクター
    2000年博報堂入社。EBUエンゲージメントクリエイティブ局を経て、2013年5人の博報堂を代表するクリエイターととともにSIXを設立。2011年度クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、文化庁メディア芸術祭、Cannes Lions他、多数受賞。
  • 二見 均
    (株)博報堂 EBU エグゼクティブインタラクティブプロデューサー
    1990年博報堂入社。EBUインタラクティブプラニング部長/ソーシャルメディアマーケティング部長。デジタル領域全般、またリアル、デジタルの境界を越えたインタラクティブコミュニケーションプランニングや、マスも含めた統合コミュニケーションプラニング、そして制作プロデュースまでを幅広く担当するプロデューサー。
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