~トップランナー対談 その2~

「『前に誰もいない道』を行くことの面白さ」

インターネットの普及によって、人々の動向や社会の動きを示すデータの取得が以前よりもはるかに容易になった。
今後、IoT(インターネット・オブ・シングス/モノのインターネット化)が広がることで、
さらに広範で多様なデータが収集できることになるとみられている。
それらのデータは、広告やマーケティングをどう変えていくのか。
アドテクノロジーの専門家であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)の徳久昭彦と、
マーケティング/クリエイティブの専門家である博報堂の安藤元博が語り合う。

異業種の想像力が広告業界を活性化させる

徳久DACの大きな強みは、テクノロジーの力にあります。広告、マーケティング、あるいはクライアントの事業などをテクノロジーで支えていくことが、我々の大きな役割です。しかし、ともすると完全な「下支え」になってしまう。それだけでは、自分たちのポテンシャルのすべてを発揮することはできない。最近、そう強く感じています。「会話」の素地ができたわけですから、デジタルの側から、プロモーションの企画や商材開発などにもっと積極的に関わっていく機会を模索していく必要があると思います。

安藤先ほど、「広告クリエイティブなどの仕事をしている人たちにとって、テクノロジーやプラットフォームは、ほとんど無縁の領域だった」というお話がありましたが、以前は、企画やアイデアのところと、テクノロジーによる実現のプロセスはほぼ完全な分業だったわけですよね。あまりいい表現ではありませんが、「頭と手足を分ける」といった感覚が確実にあったと思います。
 しかし、世の中は大きく変わっていて、それぞれの仕事の線引きは必ずしも有効に機能しなくなってきています。何が「頭」で何が「手足」かもわからなくなっている。新しいプロモーションを企画するには、テクノロジーの専門家の知見も必要になってきています。例えば、デジタルによるデータの収集と活用はテクノロジーの領域に属しますが、それがなければ企画の品質が上がらない。そこの明確な区分けは事実上なくなってきているわけです。
 さらに、企画の実行と並行してデータが生成されるので、それを継時的に収集し、次の企画につなげていくことも当たり前になっています。戦略、企画、実施のバケツリレー型の仕事ではなく、それらが有機的に連携して動いていく、そういう時代になっている。
 だから、いろいろな分野の専門家が集まって、一つのチームとなっていくのが理想なのだと思います。そこには、アイデアを出すことが得意な人もいるし、テクノロジーに詳しい人もいるし、データ分析の専門家もいる。そういう一体感を作っていきたいですよね。

徳久それぞれの専門性をいかした発想力があっていいし、企画力があっていい。それによって、チーム全体のパワーが上がっていけばいい。まさしくそういうことだと思います。

安藤そうなると、「データという共通言語」の役割がますます大切になっていきそうですね。

徳久データという共通言語が、デジタルの世界とトラディショナルな広告の世界を結びつけた──。先ほどそんなお話をしましたが、データにはそれだけでなく、広告業界とまったく異なる産業とを結びつける力もあると私は考えています。
 今後IoTが進んでいくと、あらゆる「現場」からデータが集まってくるようになります。そうなると、それぞれの現場ごとの知見が重視されるようになるはずです。例えば、エネルギー分野から得られたデータの読み方を最もよく知っている人は、エネルギー産業の現場に詳しい人です。したがって、IoTのデータをマーケティングに生かしていく場合は、それぞれの産業分野の専門家がいた方がいいということになる。

安藤それぞれの産業分野の経験や知識が、広告やマーケティングに生かせるかもしれない。

徳久ええ。そのような人材が広告マーケティング業界に入ってくることによって、これまで見たこともなかったような斬新なアイデアが生まれるかもしれません。いわば、異業種の人たちの想像力がデータによって広告やマーケティングにつながるわけです。

安藤それは非常に面白い見方ですね。広告業界はこれまでは確立した業界だと考えられてきましたが、実はこれからは大きく変化していく可能性を持っている。それをリードするのはデータである。そういうことですね。確かに、物流や金融の知見は、広告やマーケティングに確実にいかせると思います。

徳久IoTが重要なのは、IoTとはつまるところ、顧客の動きをデータ化する仕組みであるからです。IoTがわかるということは、すなわち顧客のことがわかるということにほかならない。

安藤そして、顧客のことがわかるということは、マーケティングがわかるということです。

徳久そう。しかし生のデータだけで顧客のことを理解することはできません。その産業分野の構造や顧客とのリアルな関係がわかっていなければ、データをビジネスに使える顧客情報として読み解くことはできない。それができるのは、その産業分野で働いた経験のある人です。

安藤そう考えると、広告マーケティング業界におけるキャリアの描き方は、今後ずいぶん変わっていきそうですね。デジタル界と従来の広告界を往来するようなキャリアルートもあれば、異業種からマーケティングのプロを目指すようなキャリアもありうる。しかも、その先にあるゴールは、誰も見たことがないものです。ないからこそ、自分たちでそのゴールを作っていかなければならない。難しいことですが、とてもわくわくすることでもあります。

徳久自分でいろいろな方向を模索していけるエキサイティングな時代になったということですよね。職業名や役職などにとらわれずに働くことができるいい時代に、今後ますますなっていくのではないでしょうか。

「生活者発想」という本質は変わらない

安藤一方で、広告ビジネスに関わる人間にとって最も大切なことは、実は変わらないと私は思っています。それは、ひとりひとりの生活者が何を求めているか、何に困っているのかを豊かに想像し、それを満たしたり、解決したりするためにイマジネーションを最大限に働かせるということです。クリエイターであろうが、マーケティングプランナーであろうが、それは同じです。デジタル業界も同じでしょう。

徳久そのとおりですね。その本質は変わらないと思います。まして博報堂DYグループは、「生活者発想」ということをずっと言ってきているわけですから。

安藤デジタルの時代になり、膨大なデータを収集し、分析し、かつ活用することが可能になったことによって、我々はようやく本当の意味での生活者発想ができるようになったのかもしれません。デジタルと生活者発想の掛け算によって、これまで想像できなかったようなものすごくおもしろいものが生み出せるかもしれない。それが博報堂DYグループの大きな可能性と言っていいと思います。

徳久今後は、既成の枠組みにとらわれない、発想力の豊かな人、想像力のたくましい人たちとぜひ一緒に働いていきたいですね。少しくらいずれていてもいい。そのずれが新しい価値を生み出すこともあるのですから。

安藤これまでなかったような職種が、広告マーケティング業界でもどんどん生まれていくでしょう。そういう新しい職種、新しい仕事の領域を自ら開拓していけるような人たちがどんどん集まってくると楽しいと思います。とにかく、激動の時代ですから、前には誰もいないわけです。自分でやってみるしかない。自分で変えていくしかない。そう思える人たちが集まることによって、業界全体が変わっていくかもしれません。私自身、新しい才能との出会いを楽しみにしていきたいと思います。

  • 徳久昭彦
    デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(株) 取締役常務執行役員CMO
    2001年 デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC) に入社。日本のネット広告おける代表的メディアプラニングシステム ”AD-Visor®”、をはじめ、”FlexOne®”、”AudienceOne®”など、独創的かつ強力なアドテクノロジーの開発を指揮。
    現在は、DACのCMOとして新規プロダクトやビジネスモデル開発を牽引しつつ、ユナイテッド、博報堂アイ・スタジオ、メンバーズなどグループ会社や投資先のボードメンバーを兼任。
  • 安藤元博
    (株)博報堂 生活者データマーケティング推進局長/
    (株)博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンメディアマーケティングセンター長
    1988年博報堂入社。以来、マーケティング領域を専門として、多数のクライアント企業の事業開発、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。2010年以降、博報堂DYグループのデジタル統合マーケティングの推進を中心的に担う。受賞歴:ACCグランプリ(2005/2011)Asian Marketing Effectiveness(Best Integrated Marketing Campaign)(2010)ほか。著書『マーケティング立国ニッポンへ』(共著)。
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